コロナ禍によりテレワークの推進、旅行控えなどの移動制限が急速に進む中、交通需要が激減しています。
それによりディフェンシブ株の筆頭であり安定した業績で増収増益であった九州旅客鉄道(JR九州)の業績が急速に悪化しており、それに引きづられる形で株価が下落しています。
今回はJR九州の今後の業績、株価、買い時、将来性、倒産確率、他グループ会社との比較などを考察してみたいと思います。
基本情報
先ずは、JR九州の基本情報を見ていきましょう!
会社名 | 九州旅客鉄道 |
業種 | 鉄道会社 |
会社概要 | 鉄道、旅行、ショッピングセンター、不動産・ホテル事業 |
売上(1Q) | 61,848百万円(前年比-38.4%) |
当期利益(1Q) | -5,119百万円(前年比-141.4%) |
PER | -12.1倍 |
PBR | 0.86倍 |
ROE | 7.61% |
ROA | 3.86% |
自己資本比率 | 49.9% |
現在株価 | 2,178円 |
株主優待 | 【株主優待割引券】 鉄道路線の運賃・割引券(1枚5割引き) 【株主サービス券】 グループ施設で利用可能な、各種サービス券 |
配当(利回り) | 93.00 円(4.27%) |
※2020年10月22日時点
JR九州は九州地区のJRを管理、運営している会社です。鉄道以外にもホテルやショッピングモール、不動産なども実施していますが、他JR同様に減収減益となっています。
注目したいのは優待です。コロナの影響で株が大幅に下落したため、配当の利回りが4%を超えています。
デフェンシブ株である鉄道会社がここまで高配当株化するのは、異常事態です。
高配当株戦略をとっている投資家にとっては、非常に気になる利回りですが購入を検討する余地があるのか?業績などから見ていきましょう。
株価と見る、時系列
次に暴落までの流れを見ていきましょう。
2016年
東証へ上場。公開価格2600円に対して、3100円の発値となった。(+19.2%)
2016年~2019
安定した収益性を確報し続け、株価は3500円前後で推移。
2020年2月
コロナショックにより世界同時株安が発生。
2020年2月:3,245円(前月比-9.5%)
2020年5月11日
2020年3月通期の決算を発表。コロナ影響により通期で減収減益、4Q単独では赤字であることを発表。
2020年5月:3,055円(前月比+5.2%)
2020年6月:2,799円(前月比-8.4%)
2020年8月4日
2021年3月通期予想を発表。上場後初となる赤字予定を発表。(18年ぶりの赤字)
2020年7月:2,078円(前日比-25.8%)
2020年8月:2,338円(前月比-12.5%)
業績
次にセグメント別の業績を確認していきましょう。
JR九州はセグメント比率が他のJRグループ会社とは違い、運輸サービスが稼ぎ頭ではありません。
たしかに運輸サービスは売り上げ、利益の1/3強を占めていますが、不動産業売上比率も高く、また利益率もが高く、実質の稼ぎ頭は不動産業となっています。
つまり運輸サービスが偏っていないため、他JRグループとより収益性のリスクが分散出来ていることことですね。
通期業績において、2020年3月度は前年比と少し減収減益ですが、コロナの影響を大きく受けた2021年3月度は大幅な減収減益、赤字を予想しています。(284億円もの赤字予想)
4半期業績において。コロナの影響を受けだした2020年3期末Qは約38憶円の赤字、コロナの影響を直撃した2021年3月期1Qは約51憶円もの大幅赤字となっています。
他グループ会社(JR)との対比
鉄道収入はJR各社で前年比で30%と程となっています。そのため運輸サービス(鉄道)の比率が高ければ高いほど大打撃を受けたことになります。
実際に各社の業績(利益)を数値で見ていきましょう。
会社名 | JR九州 | JR東日本 | JR西日本 | JR東海 |
運輸サービス比率(利益) | 39.2% | 65.3% | 64.3% | 93.9% |
当期利益(1Q) | -51憶円 (-141.4%) | -1553憶円 (-269.7%) | -767憶円 (-280.5%) | -726憶円 (-155.3%) |
通期予想 | -284憶円 (-190.2%) | -4180憶円 (-310.7%) | -2400憶円 (-368.5%) | 未定 |
利回り | 4.27% | 1.69% | 2.05% | 未定 |
セグメントにて運輸サービスに偏っていないため、赤字ではありますが他のJR各社に比べてコロナの影響は少ないです。事業の分散が効果を発揮していること数値でわかりますね。
売上ベースでもJR九州は前年の-38%ほどに収まっており、一番減収率が低いです。
なおJR東日本と同様に、改善にも力を入れており、「2030年長期ビジョン」と題して、既存事業の見直し、MaaSへの挑戦、戦略的な街づくりなどを推進し企業として変化しようとしています。
キャッシュフローと倒産確率
キャッシュフロ-
営業CF、フリーCFはコロナ影響により落ち込んでいます。
また「積極的な成長投資により事業(資産)の成長を図る」と発表しておりその投資コスト、自然災害の改修工事費用に多くのコストが発生しています。
倒産確率
2020年3月時点で現金が約238憶円でありましたが、2021年3月1Q時点では852憶円まで増やしています。
2021年通期で284憶円の赤字を予想していますので、今後も手元資金を増やしていくものと思われます。
そのため直近でも倒産リスクはありません。(現金以外にも不動産などの資産を沢山持っていますので、資金面では安全です)
株価チャート
コロナ禍の業績悪化により株価は2000円近辺でヨコヨコ相場となっています。
運輸サービスの需要は回復してきていますが、まだまだトレンドが見えてきません。
直近の10月末の決算発表にて、トレンド(上昇 or 下降)が決定するもとの思われます。
配当金
コロナ影響もありましたが、現状減配は発表していません。
2020年通期決算では「資本効率性の観点から、株主還元の強化」をしていくと発表があり、コロナで高配当化した今が仕込み時ではないかと個人的には推測しています。
配当性向も50%以下であり、今後の増配にも期待できると思っています。
なお前年度は中間、期末と2回に分けて配当が支払れましたが、今回は期末のみです。
配当総額は変わりませんが、万が一現状の業績予定よりも悪化した場合、期末の配当が減配となる可能性があるため高配当でお得だからとはいえ、全力買いは控えましょう。
株主優待
株主優待は鉄道の割引券と、グループ会社のサービス利用券がありますが、なんとコロナ禍の中、優待を拡充しています。
優待の中でお得なのは鉄道の割引券です。1枚で5割引きにもなります。JR東海は1枚あたり1割引きであることから、JR九州の優待が非常に魅力的に見えますね。
子供を連れてハウステンボス、別府温泉への旅行を考えている私としては、是非とも優待をゲットしてお得に旅行をしたいと思っています。
まとめ
- テレワーク、旅行控えにより収益性が悪化
- 運輸サービスの比率は低い
- 他のJRよりはコロナの影響が少ない
- 高配当株であり、株主に還元積極的
現状JR九州は需要激減という、会社として非常に厳しい状況におかれていることは確かです。
しかし、他のグループ会社とは違い、ポートフォリオが一つの事業に偏っておらず分散性があり不況に強いといえます、
また今後は経営方針として株主還元に力を入れていくと発表しているため、現状はコロナ影響で業績悪化、株価下落により高配当株化していますが、減配しない姿勢を示しており、会社の株主還元方針を信じて、個人的には少しづつ買い進めたいと思っています。直近、2Q決算もありますので、買い時を狙っていきたいですね。