1994年の上場以来、一度も減配をしなかったイオンファイナンシャルサービスが3-5月度の決戦にて赤字及び大減配を発表し、株が大幅に下落しております。
減配の理由は業績悪化とのことですが、具体的に何が問題なのでしょうか?
今回は今後の業績、株価、配当、倒産確率、買い時などを考察してみたいと思います。
基本情報
先ずは、イオンファイナンシャルサービスの基本情報を見ていきましょう!
会社名 | イオンファイナンシャルサービス |
業種 | 金融 |
会社概要 | イオングループの金融会社(クレジットカード、住宅ローン、銀行、保険など) |
売上(2021年通期予想) | 460,000百万円 |
当期利益(2021年通期予想) | 5,000百万円(前年比-86.6%) |
PER | 38.4倍 |
PBR | 0.51倍 |
ROE | 9.63% |
ROA | 0.67% |
自己資本比率 | 6.8% |
現在株価 | 889円 |
株主優待 | なし |
配当(利回り) | 23円(2.59%) |
※2020年7月13日時
イオンファイナンシャルサービスは、イオングループの金融中核会社です。
イオン銀行、イオンクレジットサービス、イオン保険サービス、アリアンツ生命保険、イオン住宅ローンサービスを傘下に持っています。
私も住宅ローンはイオン銀行で組んでいるため、非常にお世話になっている会社です。
基礎データで注目すべきは、2021年度の利益が前年比で‐86.6%もダウンしているという点です。(こちらは業績にて紐解きます)
またコロナと減配ショックにより、PBRが0.51倍と格安指標値となっていますね。
なお自己資本比率が6.8%と非常に低いですが、銀行はいずれの会社も自己資本比率は低いです。メガバンクの三菱UFJ4.8%、三井住友FGも4.9%と非常に低いので、イオンはそれに比べると高いぐらいの値です。
一般的な会社と比べると低いですが、問題ない数値です。
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銀行の自己資本比率の健全性はバーゼル規制(BIS規制)という国際標準にて規定
株価と見る、時系列
株価の推移とともに減配の流れを見ていきましょう。
2020年3月
コロナ拡大による不安から、世界的に株市場が下落。
イオンファイナンFSは2016年以降大きな下げトレンドであったが、コロナの影響により更なる強い下げトレンドへ。
株価:1,158円(前月比-21.6%)
2020年7月8日
イオンFSは2021年1Qの決算にて10億8000万円の赤字と上場以来の減配を発表。これにより配当利回りが大きく下がり、投資家の売りが集中。
株価:956円(前日比-15.2%)
業績
次にセグメント別の業績を確認していきましょう。
イオンファイナンシャルサービスは売り上げは約70%、利益は約57%と国内が中心ですが、利益率が高いアジア海外セクターも全体利益の約43%も占めています。
売上は右肩上がりでありますが、当期利益は2016年度から伸び悩んでいます。
そして2021年度の売上( 予定)は4600億円、前年度比-7.8%ですが、当期利益(予定)は50億円、-前年度比86.6%です。売上と利益の落差が激しいですね…。
四半期で見ると、2020/05の1Qは営業利益、経常利益、当期利益が全て赤字です。
何が赤字の原因なのでしょうか?
1Qの各セグメント毎の収益を見ると国内の利益率は黒字となっていますが、海外事業が赤字となり、かなり足を引っ張いています。
セグメント分析で確認しましたが、イオンファイナンシャルサービスは海外の利益率が非常に高く、会社の利益を牽引していましたが、その稼ぎ頭の海外アジア圏はコロナの影響により、稼げていません。
日本はコロナの沈静化が早く、比較的早期にて店舗営業を再開できましたが、アジア圏は違います。ロッダウンや行動規制により、イオンFS店舗の営業が制限されています。
それにより稼ぎ機会を失っているのです。
またもう一つの原因としては、コロナの影響により貸倒引当金繰入額が国内外で急増したことも挙げられます。(債務者がお金を返せない可能性、リスクが増加した)
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キャッシュフローと倒産確率
キャッシュフロ-
2020年度時点はフリーCF、営業CFは上向きですが、利益が取れていないため2021年度は大きく下げることが推測されます。
倒産確率
2020年2月期決算時点では現金資金は7134憶円保持しています。年々現金が増加しており、キャッシュリッチな会社ですね!
2021年1Qは赤字でしたが、通期予想では黒字予定ですので、まだまだ倒産には程遠いです。
そのため、直近の倒産リスクはありません。
今後の株価
株価チャート
コロナによる全世界同時株安、業績悪化により、大きな下げトレンドの中にいます。
長期目線では、リーマンショックにて下がり続けた2008年~2010年ぐらいの低位置にいます。
株価的にPBRが0.51倍と格安ではありますが、銀行株は景気敏感株です。また不景気になれば暴落する可能性があります。
その銀行株のリスクを理解しをあえて株を購入するのであれば、このコロナ不況時でもしっかり配当を減配しなかった三菱UFJFG、三井住友FGなどのメガバンクを購入することをお勧めします。
配当金、株主優待
上場以来、リーマンショックなどの大きな金融危機がありますが25期連続で配当維持、増配を継続してきましたが、このコロナショックにより、大幅な減配です。
私も高配当戦略をとっている投資家ですが、イオンファイナンシャルサービスは保持していませんし、今後も持つことはないでしょう。
配当に期待して銀行株を保持するならば、しっかり配当を出し、減配しない方針(累進的配当政策)を謳っている三井住友FGですね。
なおイオンファイナンシャルサービスには優待はありません。
まとめ
- 配当維持記録が25期で崩れる
- 国内外の貸倒引当金繰入額が大打撃
- セグメン別では海外のアジア圏事業が低迷
- キャッシュリッチであり、倒産リスクは低い
イオンFSは今までは高配当であり、現状株価も低位置にいるのは確かです。チャートを見ると買い時に見えるかもしれません。
国民性として日本人は逆張りが大好きなんだそうです。
どうせ戻るだろう、これ以上は下がらないだろうというストーリーを信じて購入するのはいいかもしれませんが、更に落ちた際にどうするのかをセットで考えた上で購入を検討すべきですね。(私も仮想通貨でやらかしましたので自戒の念…)
「今後の株価」にて記載しておりますが、減配してしまったという事実は変わりません。長期投資、高配当戦略をとっている投資家として、その点は看過できない問題です。
持つならば減配しない、安定した企業の株を保持していきたい。
業種分散のために銀行株を買うにしても、やはり累進的配当政策を謳っている三井住友FGを推していきたいですね。
そのため、イオンファイナンシャルサービスは購入対象外です。