新型コロナウィルス向けの治療薬を開発中のテラ(2191)の株価が暴騰、暴落を繰り返しジェットコースター相場となっています。
世界的に問題となっている新型コロナにはまだまだ治療法がありません。
テラが研究を進めている間葉系幹細胞を用いたコロナの治療法により、世界初の治療法が確立されればテラに大きな利益をもたらすことは確実です。
今回はそのテラの今後の業績、株価がどこまで上がるのか?、倒産確率、将来性、買い時を考察してみたいと思います。
基本情報
先ずは、テラの基本情報を見ていきましょう!
会社名 | テラ |
業種 | 細胞医療ベンチャー |
会社概要 | 細胞医療サービス、研究開発、医薬品など |
売上(2020年通期) | 202百万円 |
当期利益(2020年通期) | -109百万円 |
PER | --倍 |
PBR | 55.72倍 |
ROE | -161.19%% |
ROA | -95.18% |
自己資本比率 | 56.8% |
現在株価 | 1,314円 |
株主優待 | なし |
配当(利回り) | 0円 |
※2020年7月12日時
テラは東大医科研究所発のバイオベンチャーです。樹状細胞ワクチン療法を主軸にがん免疫療法の研究開発をしている会社です。
バイオベンチャーですので、他バイオベンチャー同様に全然稼げていません。
投資家に自社の成長性にかけてもらい、株を売り、そのお金で研究を続ける。研究が成功すれば、莫大な資金が会社、および投資家に舞い込んでくる。
失敗したら株価は急落し、株券もごみくずになる可能性もあるギャンブル性の強い銘柄であります。
今回は世界的に蔓延している、コロナウィルスの対策薬の臨床試験を開始したということで、市場から大きな期待により株価が急上昇しています。
株価と見る、時系列
今回の暴騰の流れを株価の推移とともに見ていきましょう。
2013年4月
フィスコ企業調査レポートの好意的な評価(2012年の増収増益、成長ポテンシャルの高さ)に投資家が反応し、株価が急上昇する。
株価:4,200円(前月比168.4%)
2013年5月
5月には一時4,970円の高値を付けるが、ピークアウトし長い下げトレンドに転換。
株価:3,315円(前月比-21.1%)
2020年4月28日
セネジェニックス・ジャパンとの間で、COVID-19 肺炎に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究契約を開始する旨を発表。
コロナの救世主となることに期待し、投資家の買いが集中。
株価:217円(前日比29.9%)
なんと6連続S高にとなり、5月15日には637円に到達。大きな上昇トレンドへ!
2020年5月13日
2020年5月13日(メキシコ時間 12 日)に第 1 例目が搬入され、本日よりメキシコにおいて COVID-19 肺炎に対する臨床研究が開始と発表。
株価:463円(前月比20.9%)
上昇トレンドは更に加速し、5月末には1344円を記録。
業績
次にセグメント別の業績を確認していきましょう。
テラは3つのセグメントに分けられますが、見ての通り全てのセグメントで赤字です。
バイオベンチャーはどこも同じような状況ですが、赤字規模ぐらいは抑えておきましょう。
2012年12月度まではなんと黒字でした。(約9900万円)
その際は細胞治療技術開発事業、細胞治療支援事業の2つの事業が黒字でしたが、翌年の2013年は細胞治療技術開発事業が赤字となり、現状は全ての事業が赤字となっています。
理由としてはがん免疫療法の競争が激化により技術が採用されない。売れる商品が開発出来てない、研究開発コストだけが垂れ流されている状態です。
これもバイオベンチャーによくある構図ですね。
四半期で見ると、2016年度以降に売上が激減していますが、これは一部事業を子会社へ譲渡したためです。(テラは4つの子会社を抱えています)
それの点を考慮したとしても、売上が非常に小さく、赤字垂れ流しであることはこのグラフから明白ですね。
ではいつから黒字化するのか?いつから売れる商品が出るのか?
2016年12月度の決算説明資料にて、売上成長モデルが発表されました。
これによると医薬品事業にて進められている、膵臓がんを対象とした医師主導治験が進んでいるWT1抗原を使った樹状細胞ワクチン(開発番号:TLP0-001)が成功するれば、グラフのようにVの字回復の逆転満塁ホームランになるという会社見通しですが、逆に言うとこれが失敗した場合、黒字化はせずに赤字がずっと続くということです。
本当にこのよう順調に進むのでしょうか?確かに成功すれば莫大な利益をもたらすでしょうが…
他のバイオベンチャーの実績を見てわかるように、研究の成功確率は非常に低いです。
第1相、第2相と臨床試験をパスして、最終相でとん挫なんてよくあることです。
あわせて読みたい
またテラはパイプラインが少ないという問題も抱えています。
現状は大きく分けて4つのパイプラインがあります。
- WT1抗原を使ったDCワクチン(TLP0-001)【第3相臨床試験中】
- 末梢循環腫瘍細胞(CTC)を抗原とした樹状細胞ワクチン( TIL)【停止中】
- 新規抗原を使ったDCワクチン【停止中】
- 新型コロナウィルス(COVID-19)に対する幹細胞治療【第2相臨床試験中】※上図に記載なし
しかし、進んでいるのは2つだけです。
CTCについては、今後パイプラインラインを拡充していくと2020年の通期決算にて発表がなされましたが、まだまだ事業ポートフォリオとしては偏っていると言わざるを得ません。
TLP0-001が第3相まで進んでいるため、完成するだろうと高を括っていると、開発がとん挫した際のダメージはとてつもなく大きなものになると思われます。
そのためテラの将来性は?といわれると、試験結果によるとしか答えられないですね。これは他のバイオベンチャーも同じですが…
新型コロナウィルス幹細胞治療は成功するのか?
今投資家が注目しているのは、第3相臨床試験に進んでいるTLP0-001ではありません。
そう新型コロナウィルス(COVID-19)に対する幹細胞治療です。
こちらはメキシコにて臨床試験が実施されており、臨床試験の目的に「安全性および有効性の確認」と記載があるため、国内基準の臨床試験のフェーズでいうこと第2相(探索的試験)と思われます。
臨床試験とは
【第1相臨床試験】健康体の人に投与し、安全であることを確認する
【第2相臨床試験】比較的少人数の患者さんに投与し、効果(安全性・有効性)を確認する
【第3相臨床試験】大人数の患者さんに投与し、効果(安全性・有効性)を確認する
この臨床試験テストが順調に進めば、7月にデータの収集完了、9月にはテスト完了となる予定です。
そして結果が問題なければ、第3相臨床試験へと進むことが出来、株価もそのタイミングにて大幅に上昇することでしょう。
しかし、治療方法開発が成功することは前述の通り、確率としてかなり低いと見ていた方が良いと思います。(臨床試験にて良い結果が得られず凍結することはよくあることです)
また現状、ジョンソンエンドジョンソンなど世界中の名だたる医療研究、製薬会社がコロナ撲滅のため、己の利益のため、治療薬・ワクチン開発に乗り出しています。
新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】
テラは名だたる大きな会社と競争する必要があります。
また開発を成功するだけではなく、コロナが終息する前までに開発し、薬を世の中に提供しなければ利益にはつながらないのです。そう、開発スピードも求められているのです。
キャッシュフローと倒産確率
キャッシュフロ-
稼ぐ力がないので営業CFは落ち込んでいます。
現金については急に増えるタイミングがありますが、ストックオプションにて株を売り、現金を確保しているためです、
これはどのバイオベンチャーもやっていることで、売れる商品が無いので、現金を確保するために投資家からお金を集めているのです。
無限に株を発行するれば、いくらでもお金を得られるのか?と思われる方もいるかもしれませんが違います。
株は大量に発行すると希薄化していき、株価は下落します。また研究が思わしくないと、投資家からも見捨てられ購入されなくなります。
つまり、売れる商品(薬、ワクチンなど)が開発出来るまでに、投資家から見捨てられたら会社は破綻するということです。
倒産確率
2020年3月期決算時点では現金資金は8.2憶円保持しています。
2020年3月期の赤字は約10億円ですので、2021年3月も同レベルであれば現金が枯渇します。
倒産か?と思われる人もいるかもしれませんが、株を新たに発行し、売却し現金を確保するものと思われます。
そのため、倒産のリスクは直近ではないと思います。
今後の株価
株価チャート
バイオベンチャー株はジェットコースター相場です。
他の株とは違い、期待で10倍、20倍にもなりますが、失望で1/10、1/20にもなります。
いまは上昇トレンドではありますが、今実施されている臨床試験の結果が見えたタイミング(2020年9月)にて、上と下のいずれかに大きく動くことは必至です。
どちらに動くのか?こればっかりは、臨床試験結果次第なのでどちらに転ぶのかは検討もつきません。
少なくとも既に期待で多くのポジションを抱えている銘柄ですので、全力で買いに行くこと、信用買いをすることは避けるべきかと思います。
当たればでかいですが、あまりにギャンブル性が強すぎるため、危険すぎます…
配当金、株主優待
配当、優待制度はなし
まとめ
- バイオベンチャー特有の売上、利益、財務状況はボロボロ
- パイプラインは少ない
- コロナが治療薬はライバル企業が強大
- 臨床試験が順調でも過信するな
バイオベンチャーのチャートはサンバイオショックから触れてきましたが、大多数の投資家は医療に詳しくありません。
そのため大きな夢や希望をバイオベンチャーに見るのです。そしてそれが大きな失望へと変わり、その結果がイナゴタワーとなるのです。
今からテラ株を全力で購入しようと考えている方いるならば、是非サンバイオショックの記事を読み返し、思いとどまって欲しいと思います。
テラは今から手を出すべき銘柄ではなく、現状は買い時でないと思います。購入するにしてもバイオ株は投機だと理解した上で購入をしてください。
あわせて読みたい