カルロス・ゴーン氏のゴタゴタ以降株価が低迷していた日産ですが、2020年3月度の決算にてリーマンショック以来の大赤字(約6700億円)になることが発表されました。
コロナの影響などもあったかと思いますが、この大幅な赤字の原因は何か?
今後どのようしてに立て直しをしていくのか?ルノーとの関係性はどうなるのか?はたまた倒産リスク、株価の推移などを今回はまとめてみたいと思います。
基本情報
先ずは、日産自動車の基本情報を見ていきましょう!
会社名 | 日産自動車 |
業種 | 自動車 |
会社概要 | 国内外にて自動車製造、販売。生産台数は世界2位(ルノー・日産・三菱アライアンス) |
売上(2020年通期) | 9,878,866百万円 |
当期利益(2020年通期) | -671,216百万円 |
PER | -2.5倍 |
PBR | 0.42倍 |
ROE | -14.33% |
ROA | -3.74% |
現在株価 | 431.6円 |
株主優待 | 5000円のカタログ(新車購入時) |
配当(利回り) | 10円(2.32 %) |
※2020年6月4日時
自動車の生産台数が世界第2位の大きな会社でありますが、近年は売上の低下、そして利益率の悪化により6700憶もの赤字を計上しています。
また以前は、大株主であるルノーへの献上金として高配当銘柄でしたが、業種悪化におり大きく減配となっています。
株価と見る、時系列
暴落(下落)の流れを株価の推移とともに見ていきましょう。
2018年11月19日
カルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役が逮捕。
逮捕前が報道される前の株価は1000円代でヨコヨコのレンジ相場だったのが、報道により株価が崩れ大きな下落トレンド転換。
株価:950.6 円
2020年1月~
世界的にコロナウイルスが拡大し、消費が低迷が懸念から更に株が売られる。
3月には年初の株価の半額まで下落。
株価:630.7円→311.2円
2020年5月28日
2020年3月期決算にて6700憶円の最終赤字を発表。赤字はリーマンショックぶり。
株価:400.9円(前日比-10.8%)
業績
先ずはセグメント構成を確認していきましょう。
セグメントは2つあり、1つは売上の約9割を占める車の販売です。主力であるはずの該当セグメントは今期は赤字であり、主力事業が稼げていない状況です。
もう一つのセグメントは、自動車ローンの事業です。車を売る際にローンを組んでもらい、金利を得る事業です。
こちらについては、比較的に販売に比べて高い利益率となっていますが、世界情勢としてコロナウイルスの拡大により各国が低金利政策をしているため、利ザヤで稼ぐことが今後は難しい状況になってきています。
またそもそも車が売れていないことも大きな問題です。アライアンスとして生産台数は2位ですが、売上、利益ともに2018年以降は低下しています。
コロナの影響が出始めた4Qでは前年比で20%ほどの売り上げダウンで、利益も20%ダウンと思いきや大赤字でした。
なぜこのようなことになったのか?それは利益率が低するからです。
決算報告書によると直近の車1台の利益率は2%です。たったの2%です。
こんな利益率では為替差や原価高騰で簡単に利益が吹っ飛びますね。赤字になって当然と思います。
来年度の対策として、製造する車の種類を減らし人気車に集中すること、効率化することで利益率5%を目指すとあります。
しかし、現状はコロナの渦の中にいます。世界的に大きく消費が冷え込んでいる中で、高額な車は売れるでしょうか?
絶対的な人気車があればいいですが、近年の日産は売り上げもパッとしません。2019年度の販売台数を見ても乗用車、軽自動車、ファミリーカー共に他メーカーが占めています。
売れていないのです…。
売れる車を作れないという問題も日産は抱えているのです。この原因としてはフルモデルチェンジまでのスパンが長いことです。
長期間モデルチェンジしないということは昔に作った車はずっと売り続けているため、時代やニーズにあっていないのです。
本対策として決算報告書には新車投入スパン、モデルチェンジスパンを短くしていくと記載がありました。
新車、モデルチェンジを積極的に行うことはいいですが、果たしてニーズにあった車、利益率5%維持して日産は開発出来るのか?
キャッシュフローと倒産確率
キャッシュフロ-
売り上げが伸び悩んでいるため、営業CFも同様にヨコヨコです。
投資CFが高いのは電気自動車への投資を続けているからです。流石技術の日産と言いたいところですが、EV車の世界市場ではアメリカのテスラ、中国の北京自動車などが市場を占めており日産は苦戦しています。
またEVの要であるバッテリーの子会社を中国企業に売却までしています…。
倒産確率
現金は2020年3月末時点では約1.6兆円も保有しておりキャッシュリッチな会社であることがわかりますね。
そのため売り上げ、利益率は低目していますが、直近にて倒産するような状況にはありません。
今後の株価
株価チャート
カルロスゴーン氏の逮捕より強い下げトレンドが続いています。
逮捕直後は、利回り5%超の高配当株であったため株価の急落はさけられましたが、近年の業績悪化、減配により株価下落のブレーキが利かなくなっています。
トレンドが転換するには、利益率と売上改善が必要になるものと思われますが、コロナによる消費の冷え込みもありますので厳しい状況です。
そのため、まだまだ日産の株は買い時ではないと思います。
配当金、株主優待
ルノーへの献上金として5%超の高配当を維持していましたが、ルノーとの関係性がごちゃごちゃになり、業績も振るわなくなったため大きく減配しています。
グラフで見るとその悲惨さがわかりますね…。
以前は高配当戦略をとっている投資家には、一定の人気があったのですが、今や見る影もないです。
まとめ
- 利益率が悪い会社体質
- 売れる車が作れてない
- 世界的に消費が冷え込みが続く(逆風状態)
- 直近の倒産リスクは低い
- 経営体制、ルノーとの関係性に不安あり
株価下落の発端はゴーン氏の逮捕でありましたが、元々社内にあったいろいろな問題が芋づる式に露見し、株価に反映されたと思っています。
特に利益率が低すぎのは大問題ですね。グローバル企業であるのですから、為替リスクにより数パーセントの利益が吹っ飛ぶことなんてよくあることなのに、2%しかないのは驚きです。
またルノーとの関係性も離れたり、近づいたりと、同じアライアンスなのにシナジー効果が全く見えません。
直近では協力して技術開発の20%の効率化をすると言っていますが、個人的には半信半疑です。
総評としては、日産自動車は購入したいとは思えない銘柄です。
更新箇所
2020年7月28日 1Q決算
2020年6月1Qの決算にて減収減益で売上は1.1兆円(前年比-50.5%)、純損益2855憶円の赤字( 前年比-4578.4%) 、通年連結予想は純損益が6700億円もの赤字予想と発表。
今年度の中間期末の配当はいずれも0円予想。(リーマンショック以来の11年ぶり)
拡大路線による業績悪化、赤字拡大の立て直し中でしたが、コロナにより思う様に立て直しが実施出ていないことが伺えます。
株価:368.1円(前日比-10.39%)
三菱自動車共々ボロボロです。